ギル・シャハムのシャコンヌ

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  クリスチャン・メルラン著のオーケストラ 知りたかったことのすべてを読中にギル・シャハムの名が出たので検索してみたところ、You Tubeにトップに上がったのがバッハのシャコンヌの動画だった。シャコンヌ好き(多くの曲数は聴いてはいない)としてはあまりに素晴らしい演奏だったので思わず動画を載せた。ギル・シャハムという名も初めて耳にしたのに最初の一曲で胸を撃ち抜かれてしまった。
 wikiで経歴を調べると、父親はイスラエル人で天文物理学者、母は遺伝学者という素質も育ちも文句のないサラブレッド(それが良いか悪いかは別として)イスラエルで育ち、11歳のときにジュリアード音楽院の特別奨学生としてアメリカに渡り、後にコロンビア大学でも学ぶ。

ギル・シャハムの演奏を聴くまではクレーメルシャコンヌが一番だった。それ以前はチョン・キョンファだった。今の私にとってギル・シャハムのバッハは一点の曇りもない完璧なシャコンヌだ。クレーメルは客観的すぎる気がするし、キョンファは感情を込めすぎるように今は感じてしまう。

シャコンヌについては私はまだ語れない。語れる時が来るのかさえあやしい。多くの著名人がこの曲について名言を残している。そのうちシャコンヌ名言集を作りたい。それを読んだところでこの曲の凄さの十分の一も伝わるかどうか、おそらく私がここに書くよりも遥かに心に響くだろう。

この祈りのような呪詛のような、麻薬じみた曲を何度繰り返し聴いたことか。バッハの曲は二面性を表現することが稀にある。おそらく故意ではない。それについても後日書き記したい。

神に捧げる音楽を、または当時の権力者からの依頼で作曲した音楽を聴きつつ、私は時を超えて音の海をたゆたう魚のように泳ぎ、ときに眠り、遊ぶ。感性に同調し共鳴し自己表現を超えた祈りを聴いて夢を見る。

動画のギル・シャハムの演奏は容易に水底へと私を引きずり込むのだ。パルティータ第3番のガボットも装飾音が笑顔を誘う。これも一聴の価値がある。

 

 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ シャコンヌ