2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

■008

「クラヴィス、おまえはまだその女に想いを寄せているか。」「ああ。俺の誠意を踏みにじってさえまだ恋心は消えぬ。」「なにゆえに彼女がその品を受け取らずにおいたのかは分からぬ。当代きっての高級娼婦のあのオリンピアだ。俺たちの想像もつかぬ理由があ…

■007

はしばみ色の瞳に白い花の編み込まれた黄金の髪を眺めるばかりだった俺はそのうちひとことふたことと言葉を交わすようになり彼女の知人の一人となった。そして先日俺は彼女の邸宅へ一反の絹を贈った。舶来品の彼女の身につけるに相応しい品物だ。城に住む商…

■006

再び石椅子に腰掛け、俺はだらりと頭を垂れた。昨夜の酒がまだ身体に残っているかのような気分の悪さだった。親友に愚痴を言って何になる。「クラヴィス、おまえ、さてはオランピアに振られたな。」 俺は今どんな表情をしているのだろう。質の悪い汗が背中を…