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4 不吉な予言を払拭するかのごとく階下へ降りてきた彼の肢体は神々しかった。ブラックアイアンの手すりをなでる手はしなやかに椅子の背もたれを掴み絹のシャツから香る花は私の吟味した香水の匂いだった。洗面台に置かれた左から5番目の、色は淡いブルーのも…

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3 ダイニングテーブルに料理をならべて腰を掛ける。夏に蓼科などに来るものじゃなかったと窓の外をみながらエアコンの温度を22度、彼の好む温度に設定した。なにしろ暑い。庭の楓の木が夏の日差しを受けたまま動かない。グラスに水と氷と冷蔵庫に入っていた…

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2 食事なんてどうでもいいとケータリングで日々過ごしているくせに月に数度の蓼科での宿泊時には慣れない手付きで私は食事をつくる。適当に買い集めた食材で見よう見まねに身体に良さそうなものを、フライパンのなかで混ぜ合わせてみる。調味料を適度に振り…

EX:[001]

1 私の彼の何処が気に入っているのかと問われたらすぐに思いつくのは言い古された言葉だろうけれども白魚のような指を持つ手だ。白く透き通って青い血管の浮き出たところどころ節の強張った、女性的ではないけれどもかといって男のようにがさつでもない、中…