■008

「クラヴィス、おまえはまだその女に想いを寄せているか。」
「ああ。俺の誠意を踏みにじってさえまだ恋心は消えぬ。」
「なにゆえに彼女がその品を受け取らずにおいたのかは分からぬ。当代きっての高級娼婦のあのオリンピアだ。俺たちの想像もつかぬ理由があるのかも知れぬ。とりあえずだ、クラヴィスよ俺の話を聞け。お前は今日模擬試験を受けに教室へ行くのだ。お前が出世を望んではいないのはわかった。だが試験は受けろ。そしてここからが重要なのだが、王の前で華麗なる秘技を披露せよ。あの苦渋に覆われた王のおもてを驚愕で瞠目せしめよ。そして乞うのだ。オリンピアを我が物にと。それが無理であるならせめて一夜の逢瀬をと。どうだ、クラヴィス。お前はオリンピアをその胸に抱くことを望むのか。」
かかえこんでいた頭がゆっくりとおもてを上げる。俺の望みがそれで、王の前で術を披露することで叶うというのか。
「ラーウス!俺はお前を愛する。家族とオリンピアの次にだ。」
俺は立ち上がると一目散に自室に向かって走った。背後から必ず来いというラーウスの声が聞こえた。