海へ向かう休日

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 7月も終わりなのに梅雨はまだあけない。去年の今頃はうるさいほどセミの鳴いていた気がする。せっかくの休みなので、高速にのって海へ向かった。梅雨らしく小雨の降る日だった。

目の前に広がる海をみると、何故か心が浮き立つ。「海だ!」と子供のようにはしゃいでしまう。地平線に広がる海の大きさに冒険心がくすぐられるのだろうか? 冒険? 海の向こうへ旅立つわけじゃない。ほんの少し、水に足を浸すために来ただけなのに。

灰色の空の雨は私の髪をぬらし、地上の海は足元をくすぐる。水にぬれつつ雨の落ちる波を撮った。雨を吸収する波なんて滅多に見られるものじゃない。スマホごしに雨粒の落ちる瞬間を捉える。捉えてるうちに、記録に残すよりも体感したい気持ちが勝さった。バッグにスマホをしまうと、私は海に向かって走った。

コンサートも、舞台も、同じ空間で同じ時間を体感したい。コロナの災厄のため、様々な催し物が、ディスプレイごしに開催されている。普段は行くことのできない遠い場所の素晴らしいショウを見れるのはありがたいことではある。ただやはり、観ることと体感することの違いを、痛切に感じる。

 海に来たからには身体全体でその場の空気を味わいたい。そして記憶の底にとどめる。無意識の土泥に沈んだそれは成熟し、いつか何かを生み出すときの糧になるだろう。さすがに海には飛び込まなかったが、砂と波と雨の感触を十分に味わった休日だった。