グレン・グールドのベートーヴェン

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 グールドといえばバッハのゴルトベルク変奏曲平均律の演奏がすぐに思い浮かぶ。しかしグールドはベートーヴェンも好んで弾いている。というよりバッハと同じ程度に録音を残しているのではないだろうか。私としてはこの作曲家は時代は異なるが同じ国の生まれで、神に敬虔であった(現在の研究ではそうでもなかったとの見解あり)という共通点しか勉強不足のため思い浮かばない。どうしてピアノ演奏の誉れ高きグールドがショパンを避けてこの二人の曲を主に好んだのか心情を吐露したものがあればぜひ読んでみたい。

 今、グールドの弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ14番を聴いている。音のひと粒ひと粒が大きく揃っていて、響きも、装飾を除いてシンプルかつ繊細で力強い。 グールドファンにはすでに明白だろうが、彼の演奏には明確に彼の印が押されている。

 雑誌のインタビューなどで、演奏家は作曲家の意図に忠実に表現すべき使命等云々と謙虚に話しているのをよく目にする。しかし彼に関してはそういった殊勝な言葉は、書簡集では残されていたかもしれないが、演奏ではまったく見受けられない。ただそこにグールドの魂がある。そして多くのファンはその魂と精神に魅了され続けている。