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 彼らが修行ででかけているのを知ったのは今朝であった。才色兼備で文武両道なフラーウス、天才肌で切れ者のルベル、美男子で気の優しいオランチアが城の外へ出かけたのを知ったのは。俺は寝床で誰かが部屋のドアをしきりに叩くのを半分夢の中で聞いていた。ああまた剣術の授業の遅刻で王様が機嫌を損ね、使いをこちらへ送ったのではないかと眼をこすりながら思った。これで何度目だろう。王の朝は早い。夕方から冴えてくる俺の身体はこの早朝練習のおかげでガタガタだ。激しく打ちつけられるトアに向かって起きた旨を伝えると、ベッドから起き上がった。うるさかったノックは止み、俺は適当に身支度を整えると腰に剣を刺し練習場へ向かうていを整えた。王の一番のお気に入りのしもべ、ラーウスがドアの外で待っていた。相変わらず一部の好きもない身なりに、漆黒の整えられた髪が眩しかった。こちらは昨夜脱いだまま床に放おったシャツを拾い上げて身につけた有様だったからなおさらだ。けれども教室で最下位の俺は最後列の隅っこで剣を振るう真似事をするだけだから服の皺などは大して目立ちはしまい。大きくあくびをしながら俺はラーウスへ挨拶をした。