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青白い物憂げな表情をいっそう暗くさせてラーウスは言った。ドアの隙間に挟んであった手紙はお前の小姓が寄越したものだったのか。味も色気もないその手紙を俺は酔いつぶれた身体で読み返し脱いだ服と共に床に放り投げたのを思い出した。

「そうか、それは手間をかけたな。申し訳ない。それほど俺を心配してくれていたとは同期の中でも最も賢く見目麗しく我が王国で屈指の由緒正しき名門コスタス家のご子息、ラーウス=パルパトス・コスタスよ。貴殿のような尊きお方にとんだ手数をおかけし無駄足をふませたことを心からお詫び申し上げたい。しかし心配は無用だ。俺は出世は望んではおらぬし、もし今回の試験で落第し放逐されたとて食うには困らん。田舎の親戚のツテをたどり芋売りでもして生計をたてるさ。」

ラーウスはじっと俺の眼を見つめた。

「俺の性に剣術は合わんのだよ。人を傷つけたり殺めたりするのは苦手だ。せいぜいこの錆びた剣先でくだらんモノを現出させるのが関の山だ。戦場では王の役には立たぬだろうし、生涯栄光にも預かることもないのは目に見えている。特に秀でた特技もコネもない俺には下級貴族の成れの果て、二級書記官がいい落ち着きどころだ。」

再び石椅子に腰掛け、俺はだらりと頭をたれた。昨夜の酒がまだ体に残っているかのような気分の悪さだった。親友に愚痴を言って何になる。

「クラディウス、お前、さてはオランピアに振られたな。」