2024-02-11から1日間の記事一覧

藤棚 015

そういい終えると、指先を胸の中央を指して、俺を見て玲は微笑んた。茶色の瞳がビー玉のようだった。俺は額に手をやり、大きくため息をつき、それから彼女の傍に投げやりに腰を下ろすと、もう一度大きくため息をついた。「ひでえ人生だな。」 メンヘラ街道一…

藤棚 014

そこまでいうと玲はソファーに座った。はじめに会ったときのように、両足をソファーに載せて、それを抱えるようにして続けた。「こんな、幻想即興曲まで弾けるようになったのも、兄さんのおかげ。家を出て、たまに帰ってくる間、兄さんの応えが聴きたくて、…

藤棚 013

「私がピアノを習いはじめたのは、兄さんと会話したかったから。別にそれほどピアノが好きってわけじゃない。私の音、少し兄さんににてるの。ほんの少しだけ。兄さんと私、一緒にいる時間が短かったんだ。話しかける時なんてなくて。大抵兄さんは練習してた…