藤棚 015

 そういい終えると、指先を胸の中央を指して、俺を見て玲は微笑んた。茶色の瞳がビー玉のようだった。俺は額に手をやり、大きくため息をつき、それから彼女の傍に投げやりに腰を下ろすと、もう一度大きくため息をついた。
「ひでえ人生だな。」
 メンヘラ街道一直線。死にたがり屋の女。薄暗い部屋で夜に陰々鬱々とした調子でブツブツ念仏じみた台詞は頭痛を覚えかつウンザリさせた。
 
「何よ。人がここまで心を晒して話したのにあんたの感想ってそれひとことなわけ?ひでえ人生って何?誰の人生よ。なにが酷いのよ。説明しなさいよ。でもまあ、私が、私が、この話をしたのってあんたで5人目だから。初めてじゃないから。特別じゃないから。ただそこにいたから話しただけだから。調子に乗らないでよね。」
「今私がっ私がって2回言ったのって何で?」
 そんなことどうでもいいでしょ、と言わんばかりに玲は俺の肩を力任せに殴った。