映画【イヴ・サン・ローラン】

 YSLが認識された最近の出来事は、宝島社から販売された雑誌の付録としてのバッグだった。今でこそ付録付き雑誌は当たり前だが当時はそのアイテムの先駆けで、しかもあのYSLが雑誌を買えばタダで貰える、ということに世の女性たちは驚愕し売れ切れ続出だったと記憶している。それ以前は化粧品でこそ名を馳せていたけれども服飾品では泣かず飛ばずで贈答品のタオルなどが出回っているだけの、ヒット作も無くブランドとしては停滞していたと記憶している。宝島社の付録の快進撃から衝撃的な広告で物議を醸し出すまで数年あったのだろうか。女性の脚の強調されたエロ的要素満載の広告が至る所に出回り、規制をかけるかけないで話題になった。

話題になればその時点で広告としては成功している。YSLはサンローランとして、名を変え新生ブランドとして息を吹き返した。そしておそらく、満を辞しての映画作成だ。

個人的意見を言えば内容はいまいちだ。ただ映像はそれなりに美しい。サンローラン役のピエール・ニネのガラスのように透きとおった瞳に魅入る。実際のイブ・サンローランに彼は生写しということであるからその姿を目にするだけでもこの映画を鑑賞する価値は充分にあると私は思う。美しく繊細な人物が儚く壊れやすい芸術を生み出す姿はなんとももどかしいというか切ないというか息苦しさを感じる。選ばれた人間の生き様を垣間見ることのできる映画だ。