(改題) 002

 鍵を使う日はすぐにやってきた。寒い冬の朝、吐く息の白い、アスファルトがうっすらと陽の光で耀く早朝、学校へ向かう道をそれて細い路上に入り、鉄柵の門の隙間からそっと敷地の中私は足を踏み入れた。犬走りを通って診療所の裏門へと向かう。鍵は制服のポケットの中で眠っている。私の手に温められながら。一限目の数学を受けずに英語の課題を終わらせるために診療所を使おうと前の晩にベッドの中で考えた。1月にもなるとクラスの半分は受験で席を外している。私がいなくても誰も気にすることなどない。教室は各自の未来のために崩壊していた。今更、と鍵を取り出して鍵穴に差し込む。今更学んだところでどうにかなるわけでもないのに、乾いた音をたてて鍵が回り古いドアは静かにゆっくりと開いた。