(改題) 003

ここへ来るのは多分2度目だ。まだ祖父が生きていた時分に母に連れられたことがあった。病院は賑わっていた。診察を待つ人々で溢れ、働く人々は忙しそうにしていた。幼心にその光景は私に恐怖心を与えた。その感覚がまだ残っていたせいか時を経て変わり切った院内の静けさにドアを閉めて戻ろうとかという衝動を覚えた。しかし授業の途中に教室へ入る緊張に比べたらまだこの奇妙な寂寞とした空間に足を踏み入れる方が楽に違いなかった。