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相手は私の考えなど手に取るようにわかるといった風情で、口元に微笑を浮かべ私が言葉を発するのを面白そうに待っていた。そのしたり顔が癪にさわった。私はなけなしの情報をかき集めて答えを出すことを試みる。。父の交友関係について。ポロのスポーツの仲間の1人?彼らは試合の後は客間で飲酒とビリヤードに一晩中明け暮れるのが恒例で庭の外れの離れに夜中にひとりで訪れる静けさなど持ち合わせていない。彼の白い肌を見れば馬に跨って空の下ボールを追って駆け回る馬鹿げた遊戯は生まれてこのかた一度もしたことがなさそうだ。仕事上のパートナーにしてはビジネスマン特有の拝金主義的なストイックさが無い。年下の友人?朝食時に席を共にする女性の友人は数多く見たけれども、男性は知らない。ああ、と私はその時はたと膝を打った。父の美しい女友達の兄弟の誰かだ。ポーカーか何かの賭けで莫大な借金を背負って身を隠しているか、貴族の娘を妊娠させてほとぼりがさめるのを待っているか、単なる気分転換か、とにかくあの美女達の誰かが父にこの場所へ住まわせるよう頼んだのだ。なにしろ彼は、私の知る限りどんな男よりも美しい容姿をしていたのだから。