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「私これから貴方のことをファーレンハイトと呼ぶことにする。」
花瓶から白いカラーの花を一本抜いて私は彼の胸ポケットに差した。
「ストイックな貴方によく似合う花。私の叔母の部屋にヘンリー・エドワード・ソロモンの絵が飾ってあるらしいの。一緒に見にきて。彼どんな絵を描いたのかしら。」
「君はこの部屋を出る前に小鳥の巣のような髪をなんとかした方がいい。ダービー卿は一日憂鬱な気持ちで過ごさねばならなくなるだろう。」
「いいのよ。私どうせ不肖の娘だし。たまには父を絶望の淵に追いやったっていいんじゃないかしら。昨日も私の見知らぬ女性と一夜同じ夢を見たのよ。」
私の言葉を聞いたシャオ・ホウはわずかに微笑を浮かべた。
「恋人に贈る絵ってどんなものかしら。ちょっとロマンチックよね。」
 彼の手をとって私は足早に私の叔母、父の妹のアイリーン・ダービーの部屋に向かった。